セミナーの時間配分の決め方|早く終わる・時間が足りないときの直し方

スライドの枚数を増やしても、講座の時間は埋まりません。25枚を60分で話し終えてしまい、35枚に増やしてみたら、やはり60分で終わった。そういう相談があります。

セミナーの時間配分を決めているのは枚数ではなく、その時間に何が起きているかです。自分が説明しているのか、受講者が手を動かしているのか、質問に答えているのか。

この記事では、講座の中身を説明・作業・質問・切り替えの4つに分けて見積もる手順を書きます。

60分と90分の仮の進行表、一人で話す時間と受講者が動く時間の測り方、早く終わったときと足りないときの直し方、録画型で何が変わるかまで扱います。

目次

時間配分がずれるのは、スライド枚数のせいではない

講座の時間を決めているのは、スライドの枚数ではありません。その時間に何が起きているか、です。自分が話しているのか、受講者が手を動かしているのか、出た質問に答えているのか。この3つは、同じ1枚でも長さがまるで違います。

1枚あたり1分から2分、という目安は、あちこちで見かけます。1枚90秒として枚数を計算できるページもあります。ただ、これは平均です。表紙や目次は数秒で流れ、操作を実演する画面は1枚で5分を超えます。受講者に手を動かしてもらう画面なら、1枚で10分使うこともあります。ならして割った数字と、実際の進み方がそろわないのは、そのためです。

Yahoo!知恵袋に、90分の授業を任された人の相談があります。スライドを25枚用意したら60分で話し終わってしまい、35枚に増やしてみたところ、やはり60分で終わった。10枚足しても、余った30分はそのままでした。

足したのが、それまでと同じ「自分が話す画面」だったからです。25枚を60分で話す速さのままなら、同じ調子の10枚は十数分で終わります。枚数は1.4倍になっていますが、その90分で起きていることは、最初から最後まで「受講者が話を聞く」だけのままです。

では枚数は何枚でもよいのかというと、そうではありません。1枚1分から2分の計算は、おおよその見当をつけるのに使えます。作った資料が持ち時間に対して多すぎないか、少なすぎないかは、それで分かります。ただ、それは結果の目安であって、時間の長さを決めている原因ではない。

時間が足りないときも、理屈は同じです。押しているときに画面を何枚か削れば、枠には収まります。ただし、削ったのが実演や質問の画面なら、受講者がつまずく場所ごと消したことになります。時計は合っているのに、受講後にできることは減ってしまう。

早く終わるときも、足りないときも、先に見るのは枚数ではありません。その60分なり90分なりの中で、何にどれだけ使っているのかを分けて数えると、どこが余っていて、どこが足りないのかが分かります。

先に分けるのは、説明・作業・質問・切り替えの時間

何時何分に何をするか、という進行表を引く前に、講座の中身を4つに分けます。自分が説明する時間、受講者が手を動かす作業の時間、質問に答える時間、そして次へ移る切り替えの時間。この4つを別々に見積もって、足したものが枠に収まるかを見ます。

切り替えというのは、休憩や、作業の指示を出してから全員が手を動かし始めるまでの数分のことです。オンラインでグループに分かれるなら、指示と移動と接続の確認で3分から5分。初めての人が多いときは5分から10分を見ておく、という目安があります。戻すときも、60秒のカウントダウンを出してから閉じるのが普通です。

分ける理由は、4つで伸び方も縮み方も違うからです。説明は自分の話す速さで決まるので、練習すれば読めます。作業と質問は相手次第で、想定より伸びます。切り替えは、やることが決まっているのに、見積もりから丸ごと抜け落ちます。これを「90分」というひとかたまりで考えると、伸びた分と縮んだ分が打ち消し合って、どこがずれたのか分からなくなります。

質問の時間が、いちばん分かりやすい例です。1問に答えるのは2分から3分が目安です。本編が60分以内なら、質疑応答は10分から15分を取る、という配分がよく使われています。ここを0分で組むと、当日1問出ただけで3分押します。3問なら10分です。押した分は、たいてい最後の説明を早口にして埋めることになります。

自己紹介は説明に、休憩は切り替えに入れます。迷ったら、そのあいだ受講者が何をしているかで決めるとよいでしょう。

「自分の講座は説明だけで、作業も質問もない」という場合も、4つに分けます。作業が0分でも、質問と切り替えは必ず起きるからです。0分で組んだ項目は、当日そのまま超過分になります。

それぞれ何分にするかは、次に決めます。先にやるのは、4つに分けて足すこと。分ける前に進行表を引くと、直すときにどこを削ればいいのか分からなくなります。

仮の進行表の作り方(60分と90分の見本)

進行表は、時刻から書きません。先に分数で積み上げて、最後に開始時刻を足して時刻に直します。手順は4つです。

  1. 説明・作業・質問・切り替えを、それぞれ何分にするか書き出す
  2. 予備を、全体の1割ほど取る(60分なら6分、90分なら9分)
  3. 足して、枠に収まるか見る
  4. 開始時刻を足して、時刻の表に直す

1分単位で組んでも、そのとおりには進みません。刻みは5分でよいでしょう。

仮と呼んでいるのは、そのとおりに進める表ではないからです。守るのは終わりの時刻だけで、途中の5分や10分のずれは、進めながら吸収します。合わせるための表ではなく、ずれに気づくための表です。

60分の見本です。

  • 導入(挨拶・今日のゴール)5分
  • 説明 15分
  • 切り替え 3分
  • 作業 15分
  • 共有と質問 10分
  • まとめ 6分
  • 予備 6分

90分なら、こうなります。

  • 導入 10分
  • 説明 15分
  • 切り替え 3分
  • 作業 20分
  • 切り替え 2分
  • 共有と質問 15分
  • 説明 10分
  • まとめ 6分
  • 予備 9分

説明が15分、20分で切れているのは、15分から20分ごとに中身を変えるためです。90分ずっと講義、90分ずっとグループワークは避ける、というのが研修を組む側の目安になっています。人の集中が続くのが15分ほど、覚えていられるのが20分ほど、という理由からです。

質問に10分や15分を当てているのは、さきほどの1問2分から3分で、3問から5問を受ける計算です。

この数字は、そのまま使うものではありません。自分の講座の説明が実際に何分かかるかは、通しで話してみないと分かりません。見本は、空欄のままだと手が止まるので置いてあります。数字を入れ替えて、自分の表にしていきます。

切り替えと予備は、必ず行として立てておきます。行になっていれば、押したときに最初に差し出せる持ち駒になります。書かずに0分のままだと、削って調整する余地もありません。

表ができたら、次は測ります。合っているかどうかは、通して話してみるまで分かりません。

一人で話す時間と、受講者が動く時間は、別々に測る

自分が話す時間は、一人で測れます。受講者が手を動かす時間は、一人では測れません。測り方が違うので、「このパートで25分」とまとめて測らないようにしましょう。

説明の時間は、声に出して通します。画面を見ながら頭の中で読むと、実際の半分ほどの時間で終わります。録音しておくと、どこで詰まったかも残ります。

このとき、練習で持ち時間ぴったりに終わる状態だと、本番では超えます。間の取り方、受講者の反応を待つ時間、言い直しが入るためです。練習は、少し短く終わるくらいで見ておきます。

逆に、本番のほうが短くなることもあります。緊張して早口になる、話に没頭して一気に語り終える、話の一部が抜け落ちる。この3つが原因として挙げられています。1回測っただけで決めないほうがよいでしょう。2回通せば、自分がどちらに転ぶ人かは分かります。

受講者が手を動かす時間は、自分で試しても正しく出ません。作った本人は答えを知っているので、速く終わります。できれば、家族か知り合いに一度やってもらって、その時間を測るとよいでしょう。

それが無理なときは、係数をかけます。研修を作る側の目安では、ワークは理想の時間の1.3倍、初回や難しいものは2倍を見込む、とされています。自分が5分で終わる作業なら、7分から10分です。

手が止まる原因は、たいてい3つです。使う題材が手元にない、指示が曖昧、いきなり難しい。最初の作業は、5分でできる簡単なものにしておくと、ここでつまずきません。持ってきてもらうものがあるなら、申し込みのときに伝えておきます。

質問の時間は、測るのではなく件数で見ます。1問2分から3分として、何問受けるかを先に決めておきます。

別々に測ると、当日ずれたときに、どこがずれたのか分かります。説明が長かったのか、作業が伸びたのか、質問が多かったのか。まとめて測っていると、30分余った、10分足りなかった、という結果だけが残って、次に何を直せばいいのか分かりません。

早く終わったときの直し方

早く終わること自体は、直す必要がありません。終了時刻ぴったり、または少し早く終わるのは、きちんとした終わり方です。直したいのは、余った時間を埋めようとして、話を伸ばしたり、その場で思いついた雑談を足したりする状態です。

足すものは、説明ではありません。説明を足しても、話す速さは変わらないので、思ったほど時間は埋まりません。足すのは、受講者が考えたり答えたりする時間です。

準備の段階でやることは2つです。

1つは、説明の分量を持ち時間の8割ほどで組むことです。2時間の講座なら、90分から100分くらいの中身で作ります。進行表で立てた予備の行は、押したときに差し出す分です。それとは別に、余ったときに足せる余白を、最初から空けておきます。残りを埋めるものは、次に用意します。

もう1つは、余ったとき用の手札を3枚ほど作っておくことです。5分、10分、15分と長さを変えておくと、当日そのまま当てられます。

  • 復習の問いかけ。今日の要点を3つ選び、選択式にして手を挙げてもらう
  • 自分の失敗談や、実際の事例を1つ
  • 受講者が自分の場面に当てはめて考える時間(「明日から何を変えるか」を書き出す、など)

当日の出し方には順番があります。

  1. 質問を受ける時間を先に使う
  2. 質問が出なければ、こちらから聞く(「さっきの手順で、どこがいちばんやりにくかったですか」)
  3. それでも余るなら、作業の時間を延ばす
  4. まだ余るなら、休憩を少し長めに取る

休憩は、時間を調整する持ち駒になります。1時間を過ぎたあたりで「ここで一度休憩を入れましょう」と切れば、10分から15分はそこで使えます。

埋めるためだけの課題は出さないほうがよいでしょう。時間が余ったからという理由で出した課題は、2行の感想だけ書いて提出されて終わります。受講者には、間を埋めるために出されたことが伝わります。

早く終わるずれは、当日その場で慌てる話ではありません。準備の段階で手札を用意しておけば、それで片づきます。

時間が足りないときの直し方

足りないときに早口で詰めるのは、直したことになりません。時計は合いますが、受講者がついてこられていません。削るものと、削らないものを、先に決めておきます。

準備の段階で、捨てる候補に印をつけます。予定どおり進んだら飛ばす、押したら落とす、という場所です。参考資料として後ろのほうにまとめておき、余裕があるときだけ「余談ですが」と出す形にしておくと、落としても流れが切れません。

落とす順番は、この3つです。

  1. 事例と余談
  2. 詳しい説明(配布資料に回す)
  3. 応用の話

残すものは2つあります。受講者が手を動かす作業と、最後のまとめです。

まとめを残す理由は、最後の10分がいちばん身につく時間だからです。今日やったことを振り返り、次に何をするかを決める時間で、ここを削ると講座全体が薄くなります。作業も同じです。手を動かす時間を落とすと、教わったことを一度も試さないまま終わります。

当日は、途中に時刻の確認点を置いておきます。「自己紹介は何分まで」「説明はここまでで何時何分」と決めておけば、最後になって足りないと気づく事態を避けられます。押していると分かった時点で、上の順番どおりに落としていきます。

資料が残ることは、気にしなくてかまいません。用意した内容を全部話すことではなく、参加者が何を持ち帰るかで考えます。資料を3分の2残したまま、満足感のある終わり方をする講師もいます。

終了時刻は守ります。どうしても5分だけ超えそうなときは、その前に伝えます。「5分だけ超えそうです。ご予定のある方は退席してください」と言えば、残るかどうかは受講者が決められます。黙って延ばすと、次の予定がある人が落ち着かなくなります。

話し切れなかったところは、あとで渡せます。資料をPDFで送る、質問をメールで受けて返す、録画を共有する。その場で全部詰め込むより、受講者の手元に残ります。

削った場所は、終わったあとに記録しておきます。毎回同じところを落としているなら、その部分は最初から入れないほうがよいということです。

録画型とライブ型で、測り方がどう違うか

ライブ型で測るのは、合計です。60分や90分の枠に収まるかどうかを見ます。録画型には終了時刻がないので、合計を測ってもあまり意味がありません。測るのは、動画1本の長さです。

1本の目安は5分から10分。内容が複雑でも、1本に1テーマだけにします。edXの動画690万回の視聴を調べた研究では、9分を超える動画は半分も見られずに離脱されていました。短いものほど最後まで見られていて、0分から3分の動画では、4回に3回の視聴が、動画の4分の3以上まで進んでいます。

15分を超えるなら、章を区切って途中から再生できるようにします。話を聞くだけの時間が15分から20分で切れるのは、ライブでも録画でも変わりません。

ここで、ライブ型の90分をそのまま録画に流すと、どうなるか。受講者は9分あたりで止まります。同じ中身でも、切り分け直さないと使えません。

録画型でもう1つ測るのは、受講者に手を止めさせる場所です。「ここで一度止めて、自分の資料で試してください」と言う位置を、あらかじめ決めておきます。10分から15分に一度、問いかけやクイズを挟む形でもかまいません。

作業そのものの時間は、録画では測れません。受講者の手元で進むので、こちらの時計とは関係がなくなります。測るのは、指示を出す位置と、そこまでの動画の長さです。

質問の扱いも変わります。ライブなら、その場で聞かれてその場で答えます。録画では答えられないので、受け皿を別に用意します。メールで受ける、掲示板に書いてもらう、質問に答える回だけをライブでやる。ここを決めずに録画だけ渡すと、質問は押す代わりに、行き場を失ったままになります。

切り替えの時間も、中身が入れ替わります。ライブの切り替えは、指示を出してから全員が動き出すまでの数分でした。録画では、受講者が次の動画を再生するまでの時間です。ここは測れませんが、次に何を見ればいいかを動画の終わりで言っておくと、止まりにくくなります。

分けて測るという考え方は、どちらでも同じです。説明、作業、質問、切り替えに分ける。ライブ型は合計を枠に収め、録画型は1本の長さを保つ。見る数字が違うだけです。

まとめ

セミナーの時間配分は、持ち時間を分数で割って決めるものではありません。その60分なり90分の中で何が起きているか、つまり自分が説明しているのか、受講者が手を動かしているのか、質問に答えているのかで決まります。

  • 先に4つに分けます。説明、作業、質問、切り替え。この4つは伸び方も縮み方も違うので、「90分」とひとかたまりで考えると、どこがずれたのか分からなくなります
  • 進行表は、時刻からではなく分数から積み上げます。切り替えと予備は、必ず行として立てておきます。書かなければ0分として扱われ、当日そのまま超過分になります
  • 早く終わるときも、足りないときも、直すのは当日ではなく準備の段階です。余ったとき用の手札を3枚と、押したときに落とす順番を先に決めておけば、その場で慌てずに済みます

録画型なら、測るのは合計ではなく、動画1本の長さです。

組んだ数字が合っているかどうかは、通してみるまで分かりません。まずは自分の説明を、声に出して一度通して測ってみるとよいでしょう。

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